常夏の国タイでのソロナンパ紀行:後編

Day6.アジアの欧米カオサンロード

心地よい眠りから目が覚めると、隣で静かに寝息を立てて眠る彼女の寝顔が視界に入ってきた。

もう一眠りしようか、そんなことを考えつつふとスマホに目をやると、時刻は正午を過ぎようとしていた。

数分後にはチェックアウトしなければならない。

 

気持ちよさそうに眠る彼女に申し訳ない気持ちになりつつも、スヤスヤと眠る彼女を抱きしめて出来るだけ小さい声で彼女の耳元で囁く。

『おはよう。悪いけどそろそろ荷物をまとめて出ないといけない時間だ』

「私は大丈夫。早く準備して」

 

 

正午を15分ほど過ぎてしまったものの、特に問題なくチェックアウトを済ませ、二人でビーチ沿いのカフェに入る。

当初は13時のバスでバンコクに帰る予定だったのだが、せっかく彼女もいるので一緒にブランチを食べてから出発することにした。どうせ急ぎの旅ではない。

 

カフェを出て、二人でパタヤビーチを散歩する。

心なしか昨日までよりも海水はずっと澄んでいるように感じられた。

 

手をつないで歩く二人。

端から見ればどこにでもいる売春カップルに見えたかもしれないが、僕たちの間に介在していたのは金銭では無く、確かな愛だった。それが刹那的なものだったとしても、だ。

 

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 (パタヤビーチを歩く白人老夫婦)

 

『とても綺麗なビーチだ。そして君はもっと綺麗だよ』

「恥ずかしいからやめて」

『君と一緒にバンコクに帰りたい。本気でそう思う。

「私も着いて行きたいわ、でもそれは難しい」

パタヤビーチも、君と過ごした思い出も、絶対に忘れない』

 

ビーチから数km離れたところにあるバスターミナルまで彼女は見送りに来てくれた。

 

パタヤでのこと、本当にありがとう』

「こちらこそあなたに出会えて良かったわ。また連絡して」

 

リクライニングシートを最大まで倒し目を閉じる。

次に目が覚めた時にはすでにバンコク市内に到着していた。

 

バスを降り、電車とタクシーを乗り継いで今日の目的地へ向かう。

バックパッカーの聖地と言われるカオサンロードだ。

 

ここには一泊数百円の格安ドミトリーもたくさん存在していたが、セキュリティ面や衛生面、何より連れ込みの可能性を考えて通常のシングルルームのホテルを予約していた。

 

ホテルに荷物を置いて、カオサンロードへ。

 

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時刻は19時過ぎ。通りはたくさんの人で溢れていたが、ピークは深夜だという。

 

しばらく時間があるため、以前から一度行ってみたかった世界一の高さにあるスカイバーに行くことにした。

カオサンからはタクシーで30分ほどの距離と少し遠かったが、ここはハングオーバー‼︎のロケ地に使われて以来とても有名になった場所であり行く価値はあると思った。

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高級ホテルのエントランスをくぐり、エレベーターで64階に上がるとそこには信じられない景色が広がっていた。

 

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一番安いビールでも一杯1500円程度と、地上の何倍もしたが一見の価値はあるだろう。

 

今回の旅の中で、女性と二人で訪れたい場所ナンバーワンだ。

 

ドレスアップしたハイスペ外国人もたくさんいたが、僕のような旅行者も同じくらいいたので安心した。

 

一杯のビールを大切に飲みながら夜景を眺めていると、白人の女性に話しかけられる。

 

「私たちの写真を撮ってもらえますか?」

『もちろん』

 

このホテルに宿泊している訳ではなさそうだが、綺麗なドレスに身を包んだ僕と同じ年くらいの白人女性二人組だった。

旅行中に白人女性もたくさん見てきたが、その中でも飛び抜けてスト高だった。

彼女のiPhoneを受け取り写真を撮ってあげた。

「ありがとう」

『どういたしまして』

ここまではよくあるシーンだ。しかしこのチャンスを逃すまいとすかさず言葉を続ける。

『どこから来たの?』

さっきまで笑顔だった彼女の表情が苦笑いに変わる。

パナマ

『そうなんだね。僕は日本から来たんだ。』

「ああそうなのね」

気持ちいいくらいの塩対応だった。

アジア人、いや日本人としてめちゃくちゃ悔しかった瞬間。

この状況を上手く表現できないのだが、とにかく「アジア人の男に興味なんてない」という思いがビリビリと伝わってきたのだった。

東京ではクラブで出会った白人女性を即った経験もあったが、ここで出会った彼女たちは高嶺の花だった。

しかしいずれは、あのレベルの白人女性をゲット出来るようになりたいと思った。

アジアの中で満足する僕では決して無い。

 

兎にも角にも、美しいバンコクの夜景に満足した僕はカオサンロードへ戻る。

 

身支度を整え、今夜の戦場へ。

深夜0時を過ぎたカオサンロードは、道に欧米人が溢れてバケツに入った酒を飲みながら踊り狂っていて既に結構カオスな雰囲気だった。

 

エントランスフィーを払ってクラブへ。

さすがカオサンロードにあるクラブだけあって、様々な人種の人々がいる。

割合的には欧米人4割、現地人2割、東アジア人3割、それ以外1割といったところ。

 

箱自体はそんなに広くは無かったので箱の中を容易に見渡すことができたが、ぱっと見日本人はいなかった。

というか、この旅行中にほとんど日本人を見る機会が無かった。実際には学生などの若い層を含めた多くの日本人がタイを訪れているはずなのだが。

 

今回行ったクラブの中では珍しくしっかりダンスフロアが存在し、一番日本っぽいクラブだった。

自然とテンションも上がる。

 

週末だったため、フロアは人で溢れかえっている。

ピーク時の渋谷ATOMくらいの人の多さだった。

 

その中で、一人でいる高身長コリアンガールを発見し、徐々に距離を詰め声かけ。

 

『よ!どっから来たの?』

「韓国からよ。友達を見失ってしまって」

『俺も友達といたんだけど見失っちゃって(嘘)、一緒に踊ろうか』

 

なんとなく体を寄せ合っているものの、あまりIOIは感じられない。

しかし結構タイプだったため、現地人ではないがこの子を持ち帰りたいと思った。

 

「マジで飲みすぎたわしんどい、友達も戻ってこないし、カカオトークも返ってこない」

『もう帰ったんじゃない?ホテルはどこなの?」

「この近くよ」

『じゃあ友達から連絡来るまで僕の部屋で休まない?ここから近いんだ』

「ええ、わかったわ。トイレに行ってくるから待っていて」

 

あっさり連れ出し打診が通った。外国人でも、英語でも、とりあえず打診してみるもんだなーと。

彼女が少し酔っていたのが気になったが(女性と結ばれるときはシラフに近いほうが好きだ)、一緒に寝て酔いを覚まして明日の朝にでもゴールできればいいか。にしても細くてカワイイ子だったな。そんなことを考えながらダンスフロアで待っていた。

 

しかし待てども待てども彼女は戻ってこない。

 

逃げられた。

 

よく考えればほぼ食いつきもなかった状態で上手く行くはずもなかったが、そこまで深く考えていなかったのがミスだった。

だが幸いまだ箱に入って30分ほどしか経っていない。

恐らくピークもこれからなので切り替えてサージング。

 

すると、先ほどまでいなかった日本人女性が一人でフロアにいた。

旅行者らしくなく、渋谷にいそうな私好みのギャルだった。

 

タイに来てまで日本人を狙いたくはなかったが、珍しかったしタイプだったのですかさず声かけ。明らかに日本人だったがあえて英語でオープンしてみた。

 

『やぁ、君はどこから来たの?』

「私はバンコクに住んでいるわ」

『?!君、日本人だと思ったんだけど......」

「ハハ、よく言われるの。私は日本が好きだからきっとメイクのせい」

 

驚いた。完全に日本人だと思った彼女は純タイ人だった。

日本が好きで、日系企業で働くために大学で日本語を専攻しているらしい。

六本木のクラブにも行ったことがあるという。

 

『友達はどうしたの?』

「今トイレに行っているわ。」

「私はクロエよ。よろしくね」

  

するとすぐに彼女の友達が戻ってきて、3人で踊る。ここには今来たばかりだという。

 

クロエからのIOIは感じていたが、この友達があまりいい反応ではなく、旅行者である僕を警戒していた。しかし恐らく友達の方がヘッドだった。

そしてこの友達はタイ語しか話せないためコミュニケーションが取れない。

 

どうやって警戒心を解こうか。そう考えていた時だった。

僕ら3人の元へ、一人の日本人男性がジョインしてきた。

 

「どこから来たの?」

『いや、僕日本人です!笑』

「え、東南アジアの方かと思いました!よろしくお願いします!」

 

この旅始まって、初めての日本人との交流。

彼はバックパッカーで、タイ人の友人もいてタイ語が少し話せるらしい。

 

僕は彼に、クロエの友達と和んで欲しいと頼んだ。

ナンパ師では無いが、話のわかるナイスガイだった。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

タイ語で彼女らと和んでもらう。僕は全く聞き取れなかったが、上手くコミュニケーションが取れている様子だ。

 

そして、なんとなく2-2の男女ペアに分かれた。もちろん僕の相手はクロエだ。

 

『いやー、本当に助かりました。タイ語が分からないので困ってました』

「いえいえ!僕、この子いきます!」

 

野生のバックパッカー男性、とてもナイスな立ち振る舞い。

しかし、彼は数分後に泥酔し潰れ、トイレに行ったきり戻ってこなくなってしまった。

 

上手くいけばセパレートして即だったのに.....彼は仕事をしてくれたが、潰れてしまっては困る。

 

また3人の状況に戻ったが、明らかに先ほどよりも良い雰囲気。

そろそろピークも過ぎて、箱も終わりかけだ。

 

『クロエ、君の友達に僕と一緒に来て良いか聞いてみてくれないか?』

『今夜は君と一緒に過ごしたい』

 

多少無理矢理だったが、こうするしかなかった。

そしてクロエ自身は割と乗り気な雰囲気だ。が....

 

「ゴメン、さすがに女の子一人で帰すわけにはいかないわ。さっきの日本人の友達を連れてきてくれたら大丈夫だけど」

『分かった探してくる』

 

まぁそりゃそうだ。バンコクは平和だが、日本のように夜中に女性が一人で帰るにはまだまだ不安が残る。

 

急いで先ほどの彼を探しに行ったが、トイレにもバーカウンターにもどこにもいない。連絡先も知らない。

 

『めっちゃ探したけど見つからない』

「なら私は友達と帰らなければならない。だけど明日は大学のクラスがないから会えるわよ」

『分かった、LINE交換しよう』

 

とりあえずクロエから番ゲ、口約束だがアポを取り付け。

 

『それじゃ、また明日』

彼女らをカオサンロードの入り口まで見送ってホテルへ戻る。

 

時刻は4時前。

通りにはまだ多くの人がいたが、泥酔して大声で騒ぐ若い欧米人グループか屋台の片付けをしているタイ人くらいしかいなかった。ここでGTするバイタリティは、僕には無かった。

 

シャワーを浴び終わるとクロエから電話がかかってきていた。急いでかけ直す。

 

『ゴメンシャワー浴びてたわ』

「いいえ。さっき家に着いたわ。明日また会いましょう」

『はいよー』

 

口約束だけだとアポが流れる可能性もあったが、着信もあったので割と安心できた。

 

窓の外はまだ騒がしかったが、明日に備えてベッドに潜った。

  

Day7.バンコク最後の夜

明け方まで騒がしかったカオサンロードも、昼前に目が覚めた時にはとても静かになっていた。

もちろん昼夜問わず観光地として盛り上がっているのだが、路上で酒を浴びるように飲みながら踊り狂う欧米人で道がいっぱいになったり、爆音で音楽が鳴り響いていることは無い。

 

ホテルをチェックアウトし、その場で今夜のホテルを探す。

今日はクロエとのアポがあったため、再び都心部の部屋を予約した。

 

-おはよう。今起きたわ。何時に会う? 

-今カオサンロードを出るところ。今日のホテルに到着したら連絡する

 

タクシーで最寄り駅まで移動し、電車で市街地へ。

ホテルに荷物を置いてシャワーを浴びて彼女に電話をする。

 

『準備が出来たよ。ホテルはスクンビットエリアだからその近くで会おう』

「今からそっちに向かうね」

 

近くのショッピングモールで彼女と合流する。

昨夜とは異なりラフな格好で現れたクロエは、メイクも服装もやはり日本人っぽかった。

 

『ランチは食べた?今日はまだ何も食べてないんだ』

「私もよ。何か食べたいものはある?」

『明日日本に帰るからタイ料理が食べたい』

 

 

そして彼女に勧められたタイ料理店へ入りグリーンカレーを注文する。

 

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「今日があなたの最後の日だから、私がバンコクを案内してあげるわね」

『有名な寺院は以前回ったから、ローカルなマーケットに行ってみたい』

「それならいい場所があるから行きましょう」

 

食事を終え、電車でマーケットへ移動。

屋台でスムージーを注文し二人で歩く。

 

『人が多いから、手をつなごうよ。あのカップルみたいにさ』

「いいけど私、手がとても湿っているからなんかイヤ」

『気にせんて』

 

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1時間ほどかけてマーケットを一周。

 

『とても楽しかったよ。ホテルの近くに戻ってディナーにしよう』

そしてクロージングに向けたジャブを放つ。

『今日が最後の夜だけど、今夜はどこにも出かけないつもりだ。君と過ごしたい』

「ええ、いいわよ。私も楽しかったから」

 

この上なくスムーズな流れである。

このソロナンパ旅の最後に相応わしい。

 

まだ18時過ぎだったため、ホテルの最寄駅の近くに戻ってウィンドウショッピングをしたりオープンテラスのレストランでディナーをとったりした。

 

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ディナーを終えて、タクシーでホテルに向かう。

部屋に入ると、シャワーも浴びずにすぐに求め合った。

 

 

「これはワンナイトラブだけど、でも、それだけで終わりたくないわ」

シャワーを浴びて、メイクも落としたすっぴん姿の彼女がベッドに腰掛けながら小さな声で言った。

 

『僕もそう思っている。君を日本に連れて帰りたい、本気でそう思う』

「でも明日からはまたお互いの生活が始まるわ。でもどうか忘れないで欲しい」

バンコクも、君と過ごした思い出も、絶対に忘れない』

『そうだ、メイクラブした記念にセルフィーを撮ろうよ』

「すっぴんだから無理」

 

 

翌朝。

空港に9時過ぎには到着する必要があったため、早めにホテルをチェックアウトしてタクシーで空港に向かう。

 

ホテルの前の道路でタクシーを拾い、薄くではあるがメイクアップした彼女と笑顔でセルフィーを撮ってお別れ。

タクシーで空港に向かう道中、市街地から郊外へ移りゆく街並みを眺めながら僕はこの旅のことを思い返していた。

 

初めての海外一人旅。その舞台に思い入れの強かったこの国を選んで本当に良かったと思った。

 

僕と一夜を共にしてくれた二人の女性だけではなく、この旅行中に出会った全ての人々に感謝を込めて。